読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

完全な幸福

尊厳・倫理・平穏

『シン・ゴジラ』箇条書き感想(ネタバレ)

咲紫です! ミーハーなのでいまさらシン・ゴジラみました!!!!

 

「ワ〜イ破壊と暴力が大好き 早く暴れまわるところがみたいな〜」と思って観に行ったんですが、ゴジラ、ふつうにガチ天災だったので前半は結構キましたね……

 

以下雑感です↓(ネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・いや第二形態の動き気持ち悪いな!? あの這いずり回り方も目も見てて不安になるし体液を出さないでほしい(出さなかったら倒せてないけど)

・瓦礫が地を埋め尽くしているのもアレですが瓦礫の中に人の靴があったりとかするの「多数の市民の命……多数の市民の命……」となって結構ウワッとなる……

余貴美子の視線が強くて好き

・えっ背中からビーム出るの!?

尻尾からも!!?

・大臣が乗ったヘリが一瞬で落とされるの、予想できるとはいえウワーッ! となりますね。人間、一瞬で死ぬ……

余貴美子も死ぬ……

・瓦礫で埋め尽くされている時点でも相当でしたが首都圏が火の海になるのはマジで地獄を感じた

・でもゴジラ、人間に攻撃されるまで自分から攻撃することはなかったんですよね……歩いてただけなんですよね……

・生物……生きている命……

・「まずはお前が落ち着け(水を差し出しながら)」サイコ〜!!!

・というか泉と矢口は気の置けない仲という感じでいいですね〜

・理想を語る男が好きだからふつうに矢口蘭堂が好き……

・「ZARAはどこ?」サイコ〜〜〜!!!!

・尾頭さん、情報量が多い話を早口で喋るのでオタクっぽくて好感が持てます(最悪)

・尾頭さんずっと無表情プロフェッショナルなのいいですね

・↑からの最後の笑顔ずるすぎない!? そりゃ大好きになっちゃうでしょ……

・安田はまた違うタイプのオタクっぽさある

・安田、イラストに描かれたら目にハイライトが入ってないタイプのキャラ

・「そんなんありかよぉ!」単純におもしろい

・ほかに好きなセリフは「礼はいりません 仕事ですから」ですね。あまりにも格好よすぎる。

ビルを!!!! そんな!!!! ドミノみたいに!!!!!! アンタ!!!!!

ひかりが!!!!!!!!!!!!!!!!!!

在来線が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

・冷静に考えて「無人在来線爆弾」って呼称、あまりに強すぎますね……単純文字列として虐殺器官』並みの強さ……

伊藤計劃『無人在来線爆弾』(ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

・戦闘機とかそれに搭載されてる兵器とかが結構細かく呼称が紹介されるのに対して「スーパーコンピューター群」とか「コンクリートポンプ車群」とかがあまりにもざっくりした呼称すぎてちょっとンフフ……となってしまった(えっそこ笑いどころ!?)(たぶん違う)

・終盤になると人間への感情移入がやばすぎて「アアア!! 頼む!!! なんとか成功させてくれ!!!」という気分になっていた

・なのでポンプ車第一陣が薙ぎ払われたときアワワワ……アワワ……つってた

・なんとかなってよかった……ほんとに……

人間の力〜!!!!!!

 

 

まあ大体こういう感じですかね。おもしろかったです。

シン・ゴジラ、有能な人間が頑張る話でもあるんですが、「コネでのし上がってきた」「みんなに代理を押し付けられた」総理代理が頑張ってたんだよ〜って最後にわかるの、いいですよね……人間、当たり前なんだが有能な存在だけではないし有能な人間でなくともできることはあるのだ……

あと見逃してるのか私に読解力が致命的にないのかあれなんですけど、結局博士のやりたかったこと……とは……

博士、ゴジラになったのかな〜とか勝手に思ってたんですが確証がない。これからひとの感想とか見に行きます。

 

 

シン・ゴジラ音楽集

シン・ゴジラ音楽集

 

 

 

 

デッサンが狂ったパンケーキを食べた〜い! 星乃珈琲店に行ってきたよ!

食レポ

こんばんは咲紫です。夏は暑くてしんどいですね〜。こんなこと言っておきながら冬もしんどいんですけど……(虚弱)

 

はい、今回は今までとうってかわって食レポです。理由としてはパンケーキが無性に食べたかった以外にはないです。

 

いや〜この間偶然見かけた星乃珈琲のパンケーキに目を奪われてしまいまして。

いやだってこんなん

f:id:sakishi:20160802210708p:image

目の錯覚かな? って思うじゃないですか……(画像は公式サイト星乃珈琲店 オフィシャルサイトより)

というわけで行ってきました星乃珈琲。

 

・店舗

 

f:id:sakishi:20160802210955j:image

今回行ってきたのは石神井公園です。ただ単に行ったことのない土地だったから行ってみよ! ヘラヘラ! って感じだったんですが正直石神井公園駅あんまり交通の便がよくないです。素直に新宿とかの店行っときゃよかった

星乃珈琲は2階にあるんですが、1階がパン屋になっていて、間違えてパン屋に入りそうな構造です(それはお前だけだ)

席数はそんなに多くないですが(40くらい?)そこまで混んでないですね。私が平日の昼に行ったのも大きいと思いますが。参考にならない記事ですみません……

中はシャンデリアとかがかかっていてレトロな感じ。店員さんの制服も燕尾服みたいでかわいかったな〜! 蝶ネクタイがキュート。

お店の雰囲気も落ち着いていてなによりです

 

・注文してみよう

 

f:id:sakishi:20160802212434j:image

 目玉であるはずのスフレパンケーキがメニューに載ってなくてめちゃくちゃ焦りましたが、テーブルの上のこの……こういう……三角のやつにちゃんと載ってました。

まあ本来ならこのスフレパンケーキダブルを頼む流れだと思うんですが、私はシーザーサラダとパンケーキのプレートを頼みました……(なんで!?)(美味しそうだったから……)あとフルーツティー。

f:id:sakishi:20160802212931j:image

おお……

 

フルーツティー、デキャンタにフルーツがゴロゴロ入って出てくるのでなんかサングリアっぽいですね。

f:id:sakishi:20160802213623j:image

信じられんくらい写真映えするな!?

たぶんオレンジジュースと混ぜてあって甘くて美味しいです。果汁と砂糖が入ってる……気がする……中に入ってるフルーツはマンゴー、オレンジ、ブルーベリー、キウイ、レモン、あとなんか赤い実です。700円くらいするけどグラスでおおよそ3杯くらい飲めるのでそんな高くないですね。

 

サラダ、奥の方にある白い液体を冷製スープかなんかだと思い込んでいたので「なんか……味しないな……」と思いながら無味のまま3口くらい食べてしまいましたが、普通にシーザードレッシングでした。

シーザードレッシング、チーズ感が強いやつと酸味が強いやつに分かれると思うんですが、これは完全に後者ですね。温玉とカリカリのベーコンがいいです。

 

で、パンケーキですよ。

f:id:sakishi:20160802213530j:image

プレートのスフレパンケーキはミニサイズとのことですが、ミニサイズにしては割とでかいです。直径10cm×高さ3cmくらい?(高さって表現が出るのもすごいな)

「ふわふわ」が売りっぽいですが、結構しっかりした食感してます。サラダを食べた段階では胃がちょっと心もとなかったんですが、これ食べたら満足しました。

表面がさくっとしていておいしい!!!! あとバターがうまい!!! たぶんホイップバターなんですがパンケーキの甘さ控えめな味に合ってます。小麦とバターの香りの組み合わせは世界一だなあ……しっかりした生地を噛むと香りがふわっと立ってきて本当に幸福な気分になります。

プレートだとメープルシロップだけだったんですが、普通のスフレパンケーキだとメープルか蜂蜜で選べるみたいですね。

おいしくてもっと食べたくなりましたが満腹になったのでやめました……(理性)

 

・総評

 

パンケーキがうまいな〜!!! もう一度行ったらダブルも食べたいです。やはり最初からスフレパンケーキダブルを注文するべきだったのでは?

 

あともはや全然関係ないんですが、駅の近くにあった古本屋が結構よかったです。 (たぶん草思堂書店草思堂書店 - 石神井公園 / 古本 - goo地図

収穫です(2冊しか買ってないけど)

 f:id:sakishi:20160802215625j:image

すみません……牧野修の絶版本を見ると反射的に買っちゃうんです……

他にも町井登志夫『血液魚雷』とか小林泰三『海を見る人』Jコレ版とか「なんでそんなものを……」みたいなのが結構あってウケました(人の蔵書を笑うな)

 

チェーン店だから結構行きやすいと思いますし、お暇があれば食べてみては。

それでは〜

 

佐藤哲也『ぬかるんでから』おもしろいな佐藤哲也!?

感想 SF ファンタジー

こんばんは咲紫です。

あの……めちゃくちゃブログ放置しててすみません本当……この数日間何をやってたかといえばFate/Grand Orderをやってました……

 

んで、佐藤哲也『ぬかるんでから』を読んだんですが、おもしろいですねこれ!?

 

ぬかるんでから (文春文庫)

ぬかるんでから (文春文庫)

 

なんでこんなビビってるのかというと同作者で既読の『妻の帝国』 は、おもしろいんですがなんというか風刺色が強いように思えてしまい「私はこの本を充分に理解しきれていないのでは……?」という感覚になってしまったというのがあり。

だけど『ぬかるんでから』を読んだら「あっ妻の帝国の風刺もただふざけてただけなんすね」というのがわかってよかったです。や、違うのかもしれないですけど少なくともはそう読めたんでそうだと思います(テクスト論の悪用)

 

たとえば本書には「とかげまいり」という短編が収録されているのですが、内容的には主人公が家を出た途端にあらゆる新興宗教の勧誘に絡まれまくるという話でゲラゲラ笑えます。

その勧誘の表現が、

老若男女取り混ぜた狂信者の一団が血相を変えて迫ってくるではないか。(50P)

とか、

そこでも似たような格好の連中がそれぞれ生贄を捕まえて、善良な市民の肩に手をかけている。左右を見ればこちらも同じでスーツに身を包んだ紳士淑女に学生諸君が、あれではまるで鳥打ち帽の集団に血を啜られているようだ。(51P)

とか。いや、血を啜られているようだ」て。どんな勧誘だ。そのテンションで書く情景じゃないでしょ。

結構こういう語りは落ち着いてはいるんだけど普通にその情景はヤバいみたいな文章をベロベロ書く作家です。円城とかにも割と近い気もする。あっちよりずっとわかりやすいけど

 まあこれは収録作の中でも風刺強めのほうですが(新興宗教だし……)キリギリスがチェーンソー持って追い掛け回してくる話とか鼻が男性器の集団に拉致される話とかかなりあからさまにふざけているのも多いです。めちゃくちゃだよもう。

 

あ、あと言及しておくべきこととしては主人公の親族が幻想と現実を接続する役割を担っているということですね。

それは妻であったり、父であったり、叔父であったりするんですが、彼ら彼女らは読者視点からすると「えっ……この叔父さん明らかにヤバいでしょ……」みたいな、奇怪な(幻想的な)言動を繰り広げます。

 たとえば、表題作ではその役割はが担っています。世界が泥に覆われきってしまい、皆が貧困に喘いでいるところ、妻が謎の人物に自らの身体の一部を分け与えて皆の食料を得てくるという話です。キリストかよ!(人生で初めて言ったタイプのツッコミ)まあこういう感じで明らかに妻は人知を超えた存在に片脚つっこんでるんですが、主人公はその「身体を分け与える」行為を止めようとするんですよね。なんでかっていうと主人公にとっては妻は神でもなんでもなくて、「妻」でしかないからです。

 

ほかにもこういう描写はあり、たとえばさっき言及した鼻が男性器の集団に拉致される話(やな通称だ)だと

鼻は消滅していた。代わりにそこから生えていたのは、なんということか、よく発達した男性性器だったのである。(中略)

途方もなく大きいことを除けば自分の持ち物に似ていなくもなかったし、成人男性のものであれば叔父がよくぼくの目の前で振り回すので知っていた。(P160)

やだよそんな叔父は。

あと「祖父帰るだと主人公の祖父と父が主人公にプロレスごっこ的なこと(しごき的な)を挑むシーンがあるのですが、

ふたりは奇声を上げながらぼくの周りをぐるぐると回り、しゃがんだり飛び上がったり、拳を振り上げたり逆立ちをしたり、かと思うと身を屈めて鼻が触れんばかりに顔を近づけ、ぼくの目玉を覗き込んだりと文明からかけ離れた行為に果てがなく、(P204)

やだよそんな祖父も父も。しかしこれも表現が凄まじいですね。「文明からかけ離れた行為に果てがなく」って表現普通父親の行動に対して使おうと思いませんからね……

 

とまあ、本書に出てくる親族たちはおよそ一般的な「親族」像とはかけ離れているし普通にヤバいのですが、主人公たちにとってはそれはただの親族なんですよね。「祖父帰る」の主人公も、祖父と父に対しての感情はただ「嫌い」ってだけですからね。いやもっと普通なんか……ない……!? 本当にただの家族に対しての感情でビビる……

 

おふざけ方面に関しての言及しかしませんでしたが、最後に収録されている「夏の軍隊」はめちゃくちゃ切なくて泣けます……少年の日の思い出みたいな感じの切なさがある……

 

散々紹介してきましたが、一つこの本に問題があるとすれば絶版だってことですね。妻の帝国とシンドロームを買おう!(そうなる)

 

妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

 

 

 

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

 

 

それでは。

【ネタバレ】劇屍オタクによる劇場版『屍者の帝国』毀誉褒貶大会

SF 感想

咲紫です! みんななんの映画好き? 私はね〜『ガタカ』!(屍じゃないんかい)

 

皆さんは劇場版『屍者の帝国のことを覚えていますでしょうか。昨年10月に公開した、伊藤計劃+円城塔の小説(伊藤計劃がプロローグの部分のみ書いて亡くなってしまったので、その続きを円城塔が書き継いでいます)が原作のアニメ映画です。

 

屍者の帝国 (河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)

 

原作の 雰囲気的には『シャーロック・ホームズ』とか『未来のイヴ』とか『カラマーゾフの兄弟』とかその他もろもろをオマージュしたスチームパンク+ゾンビ冒険小説、という感じなんですがまあ映画は……二次創作メタブロマンスでしたよね……(コラ!)

 あらすじはこんなん↓

"死者蘇生技術"が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末。ロンドンの医学生ジョン・H・ワトソンは、親友フライデーとの生前の約束どおり、自らの手で彼を違法に屍者化を試みる。
その行為は、諜報機関「ウォルシンガム機関」の知るところとなるが、ワトソンはその技術と魂の再生への野心を見込まれてある任務を命じられる。

それは、100年前にヴィクター・フランケンシュタイン博士が遺し、まるで生者のように意思を持ち言葉を話す最初の屍者ザ・ワンを生み出す究極の技術が記されているという「ヴィクターの手記」の捜索。
第一の手がかりは、アフガニスタン奥地。ロシア帝国軍の司祭にして天才的屍者技術者アレクセイ・カラマーゾフが突如新型の屍者とともにその地へ姿を消したという。
彼が既に「手記」を入手し、新型の屍者による王国を築いているのだとしたら…?フライデーと共に海を渡るワトソン。
しかしそれは、壮大な旅のはじまりにすぎなかった。

イギリス、アフガニスタン、日本、アメリカ、そして最後に彼を待ちうける舞台は…?

魂の再生は可能なのか。死してなお、生き続ける技術とは。
「ヴィクターの手記」をめぐるグレートゲームが始まる! 

(映画版公式サイト「Introduction」より「Project Itoh」

まあ要するにゾンビがいる19世紀ロンドンな世界観生前「言葉を話す」ゾンビの実現可能性について研究してた友達の死体違法にゾンビ化した主人公が政府に見逃してもらう代わりにスゴクツヨイゾンビのつくりかたが載ってる「ヴィクターの手記」なるものを見つけろって言われて世界中を回ってドンチャカする話です。

 

劇屍、TLの伊藤計劃オタクが観て屍者になってたことからもわかるようにまあ色々と言いたいこととか言うべきことはあるんですがそれを考慮しても私は劇場版屍者の帝国が大好きなので毀誉褒貶大会つってもそんなに……そんなには……

まあ思ったことをメモするだけなので解釈違いとか起こしても怒らないでくださいね。怖いので。あと書いてる奴は腐女子なので偏った意見があっても怒らないでください。怖いので。

まあ

f:id:sakishi:20160710194248j:image

こんなグッズが公式で出てるのに誰も怒ってないあたり多分大丈夫だと思うんですが(なにも大丈夫ではない)

 

あとこれは普通にネタバレレビューなので今のうちに未視聴者向けに情報まとめておきます。観てね!

 

劇場版『屍者の帝国』はこんな映画:

  • クオリティの高い原作の二次創作
  • 死人に縛られる男とメタとスチームパンクのどれかが好きなら見たほうがいい 
  • 割とワトソンを好きになるか否かにかかっている気もする
  • 原作者二人についてはざっと情報を得てから観た方がよい
  • 原作は読まなくても大丈夫(その場合映画のエピローグは見て見ぬふりをしてほしい)

 

観てね!

 

※以下、劇場版『屍者の帝国』および伊藤計劃虐殺器官』『ハーモニー』ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずこの監督インタビューをね、見てほしいんですけどね。

 

小説を映像として再現することはもちろん、円城さんが書かれるときにたどられた道、伊藤さんと円城さんの関係性を、『屍者の帝国』を映像化する際の最終的な到達点として、なんとか映像に落とし込めないものかと考えながら作業しました。

(『屍者の帝国 アートワークス』P92「監督・牧原亮太郎 インタビュー」より)

 

いや……いやいや……

観てない人にとっては何が何だか……って感じだと思いますが、「フライデーとワトソンの関係は伊藤計劃円城塔の関係を重ねているんだよ」ってことですよ。現実の関係を……架空の物語に……

いや、まあそれだけなら「はーん故人の言葉を追い続ける生者ね なるほどですね」って感じなんだけどこれの問題点としては劇屍のワトソンくんはフライデーのことしか見えてないうえにめちゃくちゃエゴイズムにあふれた人間になってるということなんですよね……というか映画を観ていて「おまえそれは……ちょっと……」ってなる行動が多すぎる。

というわけで一覧表作ってみました!

 

  • ワトソンの「おまえそれは……ちょっと……」な行動一覧

 

・フライデーの死体を本人に頼まれたとはいえ違法に屍者化するうえ、なぜ屍者にしたのか絶対に周りに言わない(しかもフライデーはめちゃくちゃメンテナンスが行き届いている)

 

・クラソートキンとカラマーゾフに(文字どおり)死ぬほど「ヴィクターの手記を廃棄してくれ」って頼まれたのに、フライデー蘇らせたさのあまり全然人の話を聞かない

 

・手記を破棄するために山澤さんとバーナビーさんが奮闘している真っ最中にフライデーに手記をインストールする/その状況でやるな

 

・その結果手記が奪われて世界がハーでモニーして虐殺な器官になる/だいたいワトソンが悪い

 

・暴走したフライデーに「ただ、君にもう一度会いたかった。聞かせてほしかった、君の言葉の続きを」「なぜ置いていった」「なぜ帰ってこない」とかヤンデレ丸出しのセリフを吐く

 

・その後立ち直って「ヨッシャ! 世界救うか〜!」ってなるが、立ち直った理由が明らかに「フライデーの魂が一瞬戻ったっぽい」から

 

・こんだけフライデーに執着してるのにハダリーさんともいい雰囲気になっていて腹立つ

 

・こんだけフライデーに執着してるのにエピローグではすっかりフライデーのことを忘れていて腹立つ

 

こんなもんですかね。

どや……正直ひくやろ……? これ私の妄想でもなんでもなく事実ですからね。これが俺らの主人公ジョン・H・ワトソンくんだ。屍者の帝国は最高。

 

劇場版屍者の帝国の終盤では世界がゾンビだらけになってハッチャメッチャになるんですが上に記したようにその理由のほとんどがワトソンにあるんですよね。世界がメチャクチャになったときに主人公チームの中での唯一の良心バーナビーさんがワトソンのことを叱ってくれるシーンがあるのですが、そこで言うセリフが、

 

「全部お前のせいだろうが!」

 

 全くだ。

 

何より気になるのは、こんなヤンデレ丸出し友達好き好き大好き超愛してるキャラに重ねられる円城塔の立場は……ということ。

自分が書いた小説の劇場版観に行ったら自分と自分の友達のナマモノBLアニメを観せられたみたいなもんではと思うんですがどうでしょう(どうでしょうではない)伊藤計劃は死んでるけど円城塔は生きてるんだぞ。

ちなみに円城塔が劇場版に寄せたコメントは、

 

この映画版『屍者の帝国』における主人公たちの関係は、自分には思いつくこともできなかったものだ。盲点というよりも、そこに気づいてしまうと、それ以上の作業を継続できなくなる類いの急所に近い

(劇場版パンフレットP19:円城塔「映画版『屍者の帝国』に寄せて」より)

 

うんまあ……思いついてたらヤバいと思う……

 

あなたがそこにいてくれてよかった。

小説版を終えたときにそう思った。映画版を見終えて今はこう思う。

あなたたちがそこにいてくれてよかった。

(劇場版パンフレットP19:円城塔「映画版『屍者の帝国』に寄せて」より)

 

円城がいいならもういいよそれで。個人的には〜劇場版スタッフは倫理ねえなと思いましたがメタとブロマンスが好きなので 好きでした(よかったね)

 

あっでもラストのワトソンがヴィクターの手記を自分に書き込むシーン、めっっっっちゃ伊藤計劃を感じたんですけどあんまりそういう意見聞かないんすよね……どうなの……どうなの……

例えば、虐殺器官ラヴィスはラストで「罪を背負うために」虐殺の文法を行使します。

『ハーモニー』のトァンは人類の意識が消失する前にミァハを銃殺します。

これらに共通することは、人類全体よりも自分の欲していることを重視していることだと思っているんですよね。特にトァンさんとかは、自分の意識がなくなる前にやりたいことやっとこうみたいな感じがいいですよね。

 色々解釈あると思いますが、個人的には『屍者の帝国』のワトソンも基本的にはこれと同じで、研究者精神が旺盛な人間なので「俺に手記書き込んだらどうなんのかな〜」みたいな感じでラストに至ったんじゃないかな〜と思っております。この世のためにこの手記は自分で処理せんとアカン……」みたいなこと言っておきながら結局自分の知識欲のために手記使ってるところがめっちゃエゴでいいです。じゃないと別に自分に書き込む意味とかないですからね。普通に破壊すればいいじゃんという。

 

ワトソンについてだけめちゃくちゃ語ってしまった……いやでももう失われてしまったものを求めている必死さとか才能への執着と人間への執着の混同とかはよく伝わってきたし、多分劇場版スタッフが描きたかったのもその辺なんじゃないですかね。知らないけど。

 

あ、クラソートキンとカラマーゾフの関係は明らかにフライデーとワトソンの関係に重ねられてますよね。前者はお互いに死ぬことをわかりあっている関係で後者は死んだあとも相手の意識を自分に向けようとさせたり、死んだ相手を求めたりする関係なんですが。なんにせよ地獄だ。

ザ・ワンと花嫁とかもワトソンとフライデーなんすよね……すでに失われたものを求め続けているというアレ。劇屍、基本エゴイズムと愛の話なのでしんどいです。 

 

原作からして罰ゲームみたいな旅なんで「見逃してやる代わりに手記取ってこいや」っつー設定変更はいいと思います。ワトソン謎のヤンデレ化は……まあ……ほら……そういうこともあるよ……

原作の映像化としては端折ってるところが多すぎるので×ですが、二次創作としてはいいと思います。原作者同士の関係性を持ち込んでるあたりとかね……

ただそうなるとエンドロール後のエピローグがいただけない。

急に出てくるホームズは〜確かに原作通りだし原作読んでる身としては嬉しいんですが〜今更原作通りにやられてもな〜!?という気持ちが拭えません。逆ハーモニー。

まああれは完全に原作ファン向けの描写なので、劇場版が好きな人はエピローグのシーンだけ意識を失えば大丈夫です。

エンドロール後、ハダリーさん以外のキャラクターの目の光が失われている(=屍者化している)んですが、これは原作にたどり着けなかったバッドエンドルートだよ〜ってことなんですかね。面白いです。ハーモニい。

 

そんな感じですかね。

 

私が劇屍のことが好きな理由は人間のエゴイズムメタBL死人に囚われる人間身体の冒涜がいっぱい出てくるからです(最悪すぎる)少しでも気になるなら観た方がいいと思います。複数回見る必要はない。私は5回観たけど。

 

以上! 以上です! みんなで虐殺器官の公開まで震えて待とうね! おやすみ!

樺山三英『ドン・キホーテの消息』確かなものなんてないぜ。

SF 感想

咲紫です。今ですか? 今は花丸文庫BLACK読んでます(ダメな腐女子

 

樺山三英ドン・キホーテの消息』読みました。前々から気になってた作家だったんですがなかなか良かったです。皮肉と風刺とオマージュと。

 

 

ドン・キホーテの消息

ドン・キホーテの消息

 

 

 行方不明になった妄想癖のある老人〈騎士〉とそれを追う男〈探偵〉の話が交互に繰り広げられます。始まりはちょっとミステリっぽいかも。まあミステリを期待して読むと痛い目に合うんですが。

 

〈騎士〉は外部から見れば妄想に取り付かれた老人です。自分のことをセルバンテスが記した小説『ドン・キホーテドン・キホーテ - Wikipediaの主人公、ドン・キホーテだと思い込んでいます。そしてどこからともなく現れたお付き、サンチョ・パンサとともに現代社会の中で物語の中のように遍歴の旅に出ます。そう、妄想なのになぜか物語の中の従者がいるんですよ。この辺は本書で主に描かれているテーマと関わってくる感じ。

 

〈騎士〉サイド前半は割と〈騎士〉と現代社会の感覚のズレが描かれてて面白いですね。ミステリちょっと齧ってるひとなら殊能将之『キマイラの新しい城』の城主を思い浮かべていただければ大体合ってます。というか作者インタビュー『ドン・キホーテの消息』の樺山三英さんインタビュー : 幻戯書房NEWS読んで気づいたんですが、キマイラもドン・キホーテからイメージ得てるんですね……

 

キマイラの新しい城 (講談社文庫)

キマイラの新しい城 (講談社文庫)

 

 

あとドン・キホーテ(騎士)がドン・キホーテ(量販店)に入るシーンはさすがにふざけてんのかって思いました。いや確実にふざけてるけど。現代のわれわれが真っ先に思い浮かべる「ドン・キホーテ」ってそっちだもんね……

 

〈探偵〉サイドは「動物専門の探偵」(紺屋長一郎ではない)の主人公が「行方不明になった叔父〈騎士〉を探してほしい」という依頼を受けるところから始まります。主人公の過去とか依頼主の女とかともいろいろあるんですがまあこの記事で述べたいのはそこじゃないんで割愛で……(最悪)

で、見てほしいのがこのシーン(序盤なので大したネタバレではない)。

 

「かんたんな仕掛けだったんです」とわたしは言った。「要するに、視点を変えればそれでよかった。でもこれが、言うは易し行うは難しというやつで。なかなかそうスムーズには行きません」

(中略) 

「それでいったい、なにを見つけましたか?」

「通路ですよ。抜け穴と階段、そして長大な地下通路。通路の先は、敷地外の井戸まで続いていました。入り口はクローゼットの底に、念入りに隠されています。床面を仔細に調べていただければわかります」

「戦中にできた建物ですから」彼女はわたしの台詞を先取りして言った。「防空壕を兼ねた地下通路が張り巡らされているんです」

「知っていたのですか?」わたしは唖然とした。

「もちろん調べはついていました。叔父がその通路を伝って外に出た可能性は十分にあると思います」

「しかし施設の人間は、誰も気づいていませんでした」

「彼らは捜査の専門家ではありません。あなたとは違って」

わたしは瞬時カッとなり、それから赤面した。密室の解明について、得意げに話すところだったのだ。

「なぜそのことを隠していたのですか?」

「隠したつもりはありません」

「同じことでしょう」

「そうかもしれません。ただあなたには、できる限り先入観のないかたちで捜査に臨んでほしかった。事件を最初から、虚心に追ってもらいたかったのです。いまのところそれはうまく行っているように思えます」

(64〜66P)

普通、探偵というのは他の誰も知らない真実を求めてそこにたどり着く存在だと思うのですが、ここでは依頼者が既に真実を知っており、その上で探偵に調査をさせているんですね(まあこのシーンの状態だと実はまだ〈騎士〉がどこに行ったのかという謎は残っているんですが)〈探偵〉は自分が正しいと思っていた道を、自分が考えた上で、自分の意思で進んでいた、と思っていたけれど、それは「事件を先入観のないかたちで虚心に追ってもらいたい」という他人の意思が介入した「意思」だった。「自分の意思」「真実」という「確かなもの」がここで揺らいできます。

 

それから、上に挙げたようなミステリじみた話がだんだん社会のひずみとか集団の意志とかの話にシフトしてきます。「騎士VIII」からの展開が特に顕著ですね。「妄想」と「現実」、「正気」と「狂気」の違い、「集団の意思」の暴力性などなど。

われわれは自分のことを正気の人間だと思っていますが、正気の人間の周囲に狂人ばかりいたら異常なのは正気の人間の方なわけで。

現代社会への批判とかいろいろあるのかもしれませんが、その辺あまり深く考えなくても(いや考えなよ)こういう「今自分が信じているものが揺らぐ」小説が好きなのでよかったです。人倫とかないですからね。正直。(暴力)

 

ほかにも〈劇団〉とか語るべきところは多い気もしますがとりあえずこの辺で……一番好きなのは最後の「わたし」の章だったりします。伊藤計劃『ハーモニー』好きにオススメかも。

 

正直深く読めてない気がするので識者……読んで感想を聞かせてくれ……頼む……

月村了衛『機龍警察』 「読むアニメ」だ……

SF 感想

 咲紫です。月村了衛 『機龍警察』読みました。

いや〜読んでたら本当にアニメでびびりましたね(何?)

表紙からすると硬派な警察小説って感じですがバリ強の特殊部隊がロボに乗ってバシバシ戦う話なんで確実にオタク向けです。読もう。

 

特殊部隊(警視庁特捜部=通称「機龍警察」)のメンツからして

・外務省から特捜部部長になった謎多き人物

・ヘラヘラしてるけどバリ強の傭兵

・元警察だが過去に犯罪に手を染めた経験のあるイケメン

・陰鬱美人元テロリスト

・テロリストに家族を皆殺しにされたメガネっ子メカニック

 

ですからね。アニメじゃん……

ちなみに雇われ部隊なので普通の警察官からは鼻摘まみもの扱いされてます。こういう軋轢もあって特捜部の行動が内部から阻害されたりすることもしばしば。おお……警察小説っぽい……(警察小説は読んだことがないです)

 

その辺の陰謀や上層部の思惑とかの部分もおもしろいんですが、何より戦闘描写話の起伏のつけ方がいい。

BMIアジャスト完了」

背筋が熱くなり、全身に一瞬痺れとも痛みとも言えない感覚が走る。『龍骨〈キール〉』の回路が開かれ、姿の脊髄に埋め込まれた『龍髭〈ウィスカー〉』と連動したのだ。

『龍骨』と一対一で対応する専用キー『龍髭』。

この瞬間、いつも姿は戦場の感覚が全身に蘇るのを感じる。悪寒にも似た陶酔。閉塞にも似た高揚。炸薬と硝煙の甘美な腐臭。無数の針で体中を抉られるような感触が、細胞の一つ一つに刻み込まれた闘争の記憶を呼び覚ます。

キール、ウィスカー、エンゲージ確認。エンベロープ・リミット5・0」

両腕、両脚、胴体各部のアジャスト・ベゼルが回転し、リコイル・トリム(抵抗)を調整。自己診断プログラムが異常の有無を走査する。結果:未検出。全ハッチのロックを示すインジケーターが点灯した。

「最終トリミング完了。ステイタス・セルフチェック、オールグリーン。PD1フィアボルグ、レディ」

姿俊之警部専用龍機兵・コードネーム『フィアボルグ』。

ダーク・カーキを基調とする市街地迷彩のボディがコンテナから足を踏み出し、路上に立つ。(文庫版40〜41P)

これでテンション上がらないオタクとかいるの?

序盤からこれですからね(「龍機兵」がロボの名称です)。えっ……私ハヤカワ文庫JA読んでたつもりだったけどひょっとして深夜アニメ観てたのかな……?

戦闘描写もとにかくスピード感があっていいです。読むと映像がワーッと脳裏に浮かんでくるのですがこれは私がオタクだからかもしれない(普通に文章力が高いからだと思う)。

 

あと物語中盤のあたりで危機に陥った特捜部のメンバーAのことをメンバーBが救出する場面があるのですが(一応ネタバレかもしれないので名前伏せておきます)、もうこれが……本当に……凄くて……

何の気なしにその部分を読んだらあまりにも面白くて割と冗談抜きでガチ徹夜しました(4時くらいまで起きてた)。

 

メンバーA視点に寄った描写、メンバーB視点よりの描写、あと敵の視点よりの描写があるんですけれど、それぞれの緊迫感がよく伝わってきます。ハラハラするよ〜!

あとメンバーBめっちゃ強いんですけど、敵視点から見ると恐怖感が増大してていいですね。こんな奴が来たら誰だってビビるわって描かれ方してます。一応正義の味方なんですけどね。

 

あ、あと特捜部の元テロリストロで家族を失ったメガネっ子はガチです。ガチです。

 

大変良いエンタメでした。強い女と強い男は最高……神アニメだった……(アニメ化はしていません)

 

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

起きたままでも悪夢は見れる! 悪夢小説のすすめ

特集

咲紫です。ヨーグリーナはうまいな〜

 

悪夢みたいな小説が好きです。「悪夢みたいな小説」というのは「幻想とグロテスクが入り混じっている」とか「読むとこちらが信じていたものがガタガタに崩れていく」とか「通常の倫理が全く存在していない」とかそんな感じです。

具体例はまあ散々挙げていくので嫌でもわかると思いますが、先に言っておくとこれは今敏の『パプリカ』のパレードシーンがこの世で一番好きな映像みたいな人間向けの記事です。

私はこういう小説が大好きなのでこのブログの読者にも全員読んでもらいたいですし、全員悪夢を見て欲しいです(最悪)

☆が多いほど悪夢度が高い(完全に主観です)。

 

  • 悪夢度☆1

ルイス・キャロル不思議の国のアリス

 

不思議の国のアリス (角川文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)

 

 まあ基本っすよね。読むならことば遊びをめちゃくちゃ頑張ってる角川訳がオススメなんですが、私はオタクなので角川つばさ文庫版で買いました……

  

 

新訳 ふしぎの国のアリス (角川つばさ文庫)

新訳 ふしぎの国のアリス (角川つばさ文庫)

 

アリスという女の子がうさぎを追いかけていたら穴に落ちてしまい、不思議の国に出てしまう……というのがあらすじなのですが、不思議の国の住人は基本的に人の話を聞かないので会話がめちゃくちゃで楽しい。あと倫理もない。

公爵夫人の赤ん坊(蒸気機関車のごとく泣き叫び暴れる)をきちんと抱っこする方法が

結び目を作るみたいに赤ん坊をねじったうえで、右耳と左足をしっかりおさえてほどけないようにしておくのです(つばさ文庫/104P)

ですからね。サイコーすぎる。

 

 

 シュヴァンクマイエルの映画もオススメです!

 

で、アリスのついでに紹介しておきたいのが、

 

梨木香歩『f植物園の巣穴』

 

 

f植物園の巣穴 (朝日文庫)

f植物園の巣穴 (朝日文庫)

 

 

みんな大好き梨木香歩ですね! これは植物園の園丁(未亡人の男性)が木のうろに落ちて異界に行くっていうアレです。和製アリス。あと多少柔らかくした芥川の『河童』

で、これには千代っていう女がめちゃくちゃよく現れます(「千代という名に縁がある」云々)川端康成かな?

千代リスト↓

・幼い頃自分を世話してくれた女(姉や)

・死んだ妻

・歯医者の女

これら全員千代です。だんだん悪夢じみてきましたね! ほかにも鯰の神主とか謎の河童とかが出てきて目がぐるぐるする。梨木の中でも幻想性がかなり高いのですが最後には心にじんわりくるいい話になります。悪夢小説とは思えなくなってきたな……ネタバレしないように言うと、人間の失われた記憶を遡る話です。「何か」を失った人間が回復していく話はいいもんだ。

 

悪夢度☆2

 

中村九郎『ロクメンダイス、』

 

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

 

 そういえばこれも人間が何かを回復していく話だな……

恋をしなければ死んでしまう少年動揺すると過剰防衛反応が働いて、自分を動揺させた相手のことを傷つけてしまう少女の恋の話です。少年の方はともかく少女のほうは普通の人では? と思うかもしれませんがその「過剰防衛」は少女以外の人間が、少女を動揺させた人間のことを攻撃しはじめるというトンデモなアレ。無意識マインドコントロール

さらに主人公は社会に自分を適応させようとした結果心がすり減っており、大変精神が不安定なので主人公が見ている情景が現実のものなのか妄想のものなのかがわからない。叙述トリックでときどきあるやつ 

しかもわからなくても特に支障はない。

個人的に似た読み心地だな〜と思ったのは麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』、舞城王太郎好き好き大好き超愛してる。』、牧野修『MOUSE』です。今書いて思いましたがとんでもねえラインナップだ。

でもね〜めちゃくちゃセリフとか文章がエモいんですよね……

誰でもいい。ぼくに恋を教えてください。

ぼくは恋をしないと死んでしまうのです。

ぼくは学校で『恋』について学んだことがない。

誰からも教えてもらったことがない。

だからぼくは、恋を知らないのでしょう。

普通の人なら当たり前に、知っているものなのですか、ぼくに教えてください――先生?(口絵より)

エモすぎる。絶版なのが残念なところですが、手に入った暁には是非読んでもらいたいです。

 

富士見ミステリー文庫とかいうくらいだから『ロクメンダイス、』もミステリなの? と思われる方がいるかもしれませんが、センチメンタルドンチャカエンタメです。主人公の妄想世界で繰り広げられるバトルが楽しいんですよ(えっバトルあるんですかこの本)(あります)。

青春とその痛みが好きな人向け。

 

悪夢度☆3

 

佐藤哲也『妻の帝国』

 

妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

 

 

これまで紹介したやつはなんだかんだでちょっと可愛らしさがあったりしましたが、この辺からだんだん具合が悪くなってきます

いや、あらすじからして

「わたし」の妻は「最高指導者」である。あらゆるイデオロギーを否定し、直観による民衆独裁のみを肯定する民衆国家の構築をもくろみ、毎日大量の手紙を民衆細胞に宛てて投函していた。悪夢的な不条理世界で、奇想天外な政治劇が、残酷で饒舌な超絶技巧描写に乗って展開する。(Amazon商品紹介より)

明らかに地獄。突然民衆独裁国家の像を夢想した妻が民衆感覚により人々を誘導し帝国を建設する……っておいおい!

何においても民衆感覚(民衆独裁国家では民衆が「次に何を行うべきか」が自ずとわかる、という前提があり、その「直感」のこと)が優先される割にそれら「直感」がさすものが曖昧だったり、個別分子(民衆感覚を感じられない人々)の摘発が無限に行われたりします。こう書くとなかなか風刺っぽい話ですね……

あと妙に笑える描写がちらほらあり。

ちなみに個別分子を座らせようとする時、兵士たちは次のように言った。

「こっこっこっこっ、ざるざるざる、えっめい」

実際には一音一音を下顎に押し付けるようにして発音していた。最初の「こっこっこっこっ」は複数の個別分子を意味している。個別分子を意味する個という語が繰り返されているからだ。多くの場合、繰り返しは四回だった。なぜ四回なのかという理由については、兵士に数えられるのが四つまでだからという説明を聞いたことがある。たしかに四回を越える例を耳にしたことがない。(294P)

我ながら全然わからないところを引用してしまった……なんだそれはって感じですが、妙に好きなんですよねここの部分。ブラックユーモアとディストピアみの両立といいますか。

会話の妙なズレとかもなかなかいいです。まともな感覚を持ったキャラと、民衆細胞(民衆感覚を感じ取れる人間)とのやりとりが本当にいい。ナイスディストピア

ちなみになんでこれが☆3なのかというとまだ現実よりだからです。

 

悪夢度☆4

 

 倉橋由美子『スミヤキストQの冒険』

 

 はいきた地獄! 架空の党「スミヤキ党」の党員「Q」くんが怪しげな島の児童を党のありがたい教えに染めようとするのですが、児童にも児童を管理する人間にも本当に倫理がないので読者が信じていたものもQくんが信じていたものもバキバキに否定されていくのが本当に楽しい。常識が破壊されていくことは本当にグロテスクなんだな……というのがよくわかります。

 

「わたしを人間にあらざるものと規定することによって、人間全体を救出しようとする」

「毎日欠かさず肉を食べていたのだから、君の細胞の大半はかつてのきみではなくておきかえられている(中略)きみはきみではなくて他人なのだ」

 

ヒエ〜!!!(引用注:現在本が手元にないので正確な文章でない可能性大です、すみません)冷徹な文章と転倒した論理の組み合わせが最高。

 

悪夢度☆5

 

牧野修『楽園の知恵―あるいはヒステリーの歴史』

 

 

楽園の知恵―あるいはヒステリーの歴史 (ハヤカワ文庫JA)
 

 はい、みんな大好き牧野修ですね。同作者の『月世界小説』はまだ悪夢度は低いんですが、それでも10人の知人に読ませたらそのうちの2人が悪夢を見ていました。

『楽園の知恵』は短編集なんですが、どの話も奇想妄想幻想悪夢ですごい。

多分この画像を見てもらうのが早いんですが(これは収録作「踊るバビロン」のはじめの1P)

f:id:sakishi:20160619001012j:image

 お前……

「踊るバビロン」はこの脚注芸もすごいんですが、話の内容自体も巨大な屋敷をめぐって喋る家具と主従関係を結んでSMプレイをしたりするのでヤバイちなみに主人は家具の方です。ほかにも官能小説で世界を解体したりとか黒魔術演歌の歴史をつらつら述べる話とかどういう発想してんだお前……みたいな作品ばっかで楽しいです。これぞ悪夢。

でも牧野修初読には多分向いてないので『月世界小説』か『MOUSE』がオススメです。こっちもおもしろいよ。

 

他にも芥川龍之介『河童』とか内田百閒『冥途』とかありますが割愛。樺山三英ハムレット・シンドローム』、西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』とかも悪夢みがあるらしいとのこと(未読です)。

 

みなさんも良き悪夢ライフを!