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『正解するカド』感想-好きなところと嫌いなところと褒めるべきところと批判すべきところとが合わさって死ぬ

咲紫です。『正解するカド』好きです! 正気か。

 

いや〜………やっばかったですよね正解するカド(以下カド)最終話……Twitterでもamazonでもボロクソ叩かれてますけど正直好きな人間からしてもいろいろな意味において仕方ないよな……という気持ちでいっぱいになりましたわ……

 

というわけで最終話を中心にしたカドの感想です。好きだけど……好きなんだけどな……

 

※以下『正解するカド』のネタバレと野崎まど『know』の若干のネタバレを含みます

 

 

 

(※前提として:私が読んだことのある野崎まど作品は『know』『BLAME! THE ANTHOLOGY』の「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」と本作のみです)

 

えっと〜たぶんこのアニメが叩かれてるのって

 

  1. 9話あたりからの超展開(一応伏線らしきものはあるがそれにしても唐突すぎる)
  2. 男性形態をとっているヤハクィザシュニナが男性の真道に執着していることによって同性愛描写があるように見える(この描写自体は悪くないです)
  3. 2の描写があるにもかかわらず最終話でヤハクィザシュニナを容赦無く異性愛で殴ることによって同性愛を異性愛で殴っているように見える
  4. 唐突に入る恋愛要素と、その描写の荒さ(どうして好き合うようになったのかがあまり仔細に書かれていない)
  5. 最終話におけるキャラの扱いの全体的な悪さ

とかの理由だと思うんですけど……どれも全く否定できない……というか正直ここは批判すべきところだと思います。いや1に関してはそうでもないかな。

 

☆良かった点

物語の先の展開か予測できないところはやっぱ魅力かなとは思います。本当に毎週驚いていた。驚きの感情、やっぱエンタメですからね。というかこれはもはや私の嗜好の問題なのでは……? とにかく先が気になってどんどん観てしまう求心力はすごい。まあでも8話までの物語を期待してた人には残念な感じになるだろうな……たぶんカド観るときに一番重要なの、細かいところを気にせず物語のノリに乗れるかどうかなのでは。

 

真道くんほんとキャラがいいな……なんか派手さはないんですけどどの人間や人間ならざるものに対しても誠実に対応し続けるさまが本当にいい。カド、登場人物のほとんどが真道幸路朗のことが好きという異常なアニメなんですけど、観てたら納得するだけの魅力はあります。最終話の非道行為については後で触れます。

 

・細かい話になりますが、登場人物、みんな頭が良くてストレスフリーに観られます。そしてみんな頭がいい割に視聴者が置いていかれないのもすごい。カド転がす回とか品輪博士がワム作る回とかね。それ以降の展開においての意味で置いていかれた人はいるかもしれない。

 

・ヤハクィザシュニナの会話はできるが致命的に倫理観や価値観の違うものとしての描き方の良さ! 9話終盤ほんと凄かった……このアニメ、「ヤハクィザシュニナが敵か味方かどうかを判断する」というのも見所だったと思うのですが(というかヤハクィザシュニナ本人が言っている)ヤハクィザシュニナ、人類にとってはマジでヤバい存在なのに本人は全く自分の行為を悪と思ってなさそうなところがいいなと思います。エッ最終話のやたら感情があるヤハクィザシュニナ……? えーっと……うーん……そうねえ……(いや私は好きですよあれ)

 

☆悪かった点

恋愛描写が唐突でしかも荒い!!!! いや沙羅花のことも真道くんのことも好きなんですよ……好きだからこそさあ……もっとさあ……二人にはゆっくりと関係を深めていってほしくてさあ……(言葉にならない感情)真道くん、同じように絆を深めあったとしても沙羅花が男だったらキスしてないでしょ!?

 あんまり関係ない気もしてきますが、カドの異性間恋愛描写見てたら、同脚本家の『know』の終盤あたりで唐突にヒロインと主人公が性交渉しだしたの思い出しました。安易に性交渉をするな。いやそれまではなんか普通の(普通でもないな)男女バディって感じで最高だったんですよ……信頼しあっているなという描写はあっても恋愛じみた描写は……なかったんですよ……お前ーっ男と女がなーっ絆を深めあったからといってなーっ安易になーっ恋愛をなーっ! 

まあ『know』は多分二人の絆が深まりました〜ってことを描写したかったんでしょうが、カドの場合異性愛を完全に道具として扱っている(後述)ので面白い。面白くはないです。あと念のために言っておくと私は真道くんが異性愛者であることを批判したいわけではないです。

 

・そして異性愛でヤハクィザシュニナをむやみに殴るんじゃないよ!! リストのところでも書きましたけど、ヤハクィザシュニナが男性形態をとっていて、しかも男性である真道くんに執着していたらそれはどうしても同性愛を想起してしまうわけです。わけですよ。それはいいんです。その状態のヤハクィザシュニナに真道くんと沙羅花から生まれたユキカを見せつけるのはお前それ……暴力だよ……そういう意図がないとはわかってても同性愛を異性愛で殴っているように見えてしまうよ……まあヤハクィザシュニナが女性形態でも絶対あのやり方とってたとは思うんですけど、それはそれでな。なんにせよ今の時代やるには正しくない(ように読めてしまう)表現ですよね……

 

異性愛が完全に道具扱いされてるのもウケる。ユキカ、真道くんと沙羅花の愛の結果というより問題を解決するための道具ですよねあれ。コラ! 異性愛も出産も子供も道具じゃないんだぞ! 感情が挟まれる余地がない。真道くんと沙羅花の恋愛描写もこれをやるためだけに描かれたんだな……って気がしますよね……

 

最終話において全体的にキャラの扱いがヤバいのもヤバい。いやほんと……16年間子供を育てさせられた花森くんの気持ちを考えてやれよ……真道くんも沙羅花も普通に考えたらもっと愛をもって子供を産んで育成する人間だと思うんですけど、物語的にああなってしまった……というか真道くんいままであんな『信じて送り出した真道が地球大好き異方存在との異性愛にドハマリして出産顔ダブルピースビデオレターを送ってくるなんて...』みたいなことするキャラじゃなかったですよね!? 「ヤハクィザシュニナを驚かせる」という物語の目的のためだけに動いている……完全にキャラが物語のパーツとしてしか動いていない……キャラで観てたひとはかなりキツそうです。特にヤハクィザシュニナ。キャラで観るアニメではない。

 

・地味にムカついたのがユキカの「あいつ、そんなに悪いやつじゃなかったよ」ですね。お前消滅させといてそんなこと言うのかよ! いやまあこれはぽっと出のキャラにいままで出張ってたキャラをボコボコにされた個人的な恨みなんですけど。たぶんこれラストの「これからは我々が異邦に向かうべきだ」みたいな語りのあとにユキカがヤハクィザシュニナに会いにいく描写があったらそんなムカついてなかった。

 

・あと最終話のあまりに感情があるヤハクィザシュニナもちょっと違和感ありました。ヤハクィザシュニナが感情を会得する事自体は別にいいんですけど、9〜11話を観てから12話観るとちょっと感情を学びすぎというか、急。これは尺が足りなかったのかなー。

 

個人的に特に気になったのはこの辺ですかね。好きなところは物語の予測が全くできないところ、ヤバイなと思ったところは異性愛で殴ってるところキャラの扱いです。本当に人選ぶアニメだなこれ! 私は好きですが人に勧める気にはなれないですね……

 

まあこれは合わなくてもしょうがないと思います。SFの傷はSFで癒すしかない。最高の小説『マルドゥック・スクランブル』を読め。以上です。

 

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

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めちゃめちゃどうでもいいんですが、このiPhoneケース使ってると私がNTRムービー見せてきそうな人間に思われそうですね。